カテゴリ:舞-HiME ss( 9 )
白衣は正義。正義のミカタ。
ということで、なんとなくフェスティバルに参加してみました。(何(^^;))


2/11現在、サボンさんのところで開催されているHakui祭に便乗気味。いや気味じゃない。無意味に白衣。(笑)

祭は勢いです。笑って見逃してください(^^;)
タイトルのRhapsodyは、好き勝手、くらいの意味でつけてます。大間違い。
えーと。気分気分。(爆)
そして字余り感満載。

──いろいろごめんなさい。
かの有名な曲とはまったく関係ありません。

追伸:
イラストバトン、受け取ってくださってありがとうございました。
こんなところですみません(^^;)

白い祭(笑)
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by touno_y | 2008-02-11 15:10 | 舞-HiME ss
【リハビリSS】超微妙なのに長い(苦笑)
えー。
なんでこんなに時間が掛かるのか。原因はあるような気もしますが。
全然おめでとう話ではない、久方ぶりのssでございます。

うーわー拍手お返事溜まりまくっていますが。
7月の終わりだったかに、花火のメッセージをくださった方の言葉が
切っ掛けで書き始めたssです。

なんでこんな話になっているのかは‥‥聞かないでください‥‥orz


──けど、こ、これでやっとガンパレ諸々のお返事がっ!
ってもう日曜終わるじゃないか orz  すみません。ぼちぼち返しますんで‥‥

【夏兎】
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by touno_y | 2006-08-20 22:27 | 舞-HiME ss
びみょー(汗)
なんとなく文章リハビリ中な感じ満載。
脳味噌が雨に溶けているような気がします。 orz

ちょろりと浮かんで書いてみたんですが、なんか謎。

静なつ謎短文。
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by touno_y | 2006-06-18 01:10 | 舞-HiME ss
--- wish --- part.1 / 6

ドゥカティのシートをタンデムに変えた。

私は1人でいたし、誰かと共にある時間なんて考える余裕はなかった。
でも、今は。
全て終わった今は、1人くらいはいいかな、と。
漠然と思ってパーツを注文し、バイクをメンテナンスに出した。

別に誰を乗せる訳でも無い。
舞衣はバイクを見かけて
「なんかちょっと雰囲気変わったよね?」と聞いてきた。
「パーツを少し代えたんだ」
そうなんだ?とあまりバイクに詳しく無さそうな彼女は言葉を切る。
無理矢理頼まれて、後ろに乗せた事もあったんだがな、と思い出したが、どうでもいいことだった。
じゃあな、と、湾岸へ遠乗りに出る。

潮の香りの中、久しぶりの赤信号で停車した。
繁華街を外れた、海沿いの国道へ抜ける三叉路。
白い陽射しに揺らぐアスファルト。誰も渡らない無人の横断歩道がシールド越しにも眩しい。
歩行者の青信号をちらりと目の端で確認し、身体をほぐすために手を後ろに組む。
思いきり反らした腰の後ろには、呆気無い程の空間があってちょっと驚き、なつきは小さく苦笑する。

そんな、タンデムシートの微妙な違和感にも、そのうち慣れた。





避けられた手。夜闇になお艶やかな黒髪が乱れる。

『たとえ恨まれても』

悲鳴。それは否定。そして拒絶。
叩き付けられた絶対の嫌悪。分っていたはず。

『うちのもんにしてみせます』

何より、怯えた瞳。似合わない。なつきにそんな瞳は。それなのに。

『あんたはうちのもんや』

自分の想いと存在こそが、求めて止まない強い光を殺す。
その、一番疎ましく思っていた事実。

『うちが守ったるさかいね』

いつでもなつきを見ていた。なつきしか見ていなかった。
でもそれは‥‥

赤黒い焔に取り巻かれ、不意に心臓を鷲掴みにされた。
そうとしか言い様のない、息もつけない締め付けるような痛み。

──なつき‥‥ そんなに、うちが嫌い?

こぼれた吐息はそれでも真実。
ぐちゃりと握りつぶされた心臓。漆黒に限り無く近い闇。



気がつくと夏掛けをぎっしり握りしめていた。食い込んだ指先が痛い。
知らず止まっていた呼吸。気づいた途端に身体は咳き込むように息をつく。
わずかに安堵する。ゆっくりと指を開くと、両手は細かく震えていた。
髪に篭った熱と、ぬるりとする首筋。寝汗で肌に張り付いた寝巻きが不快だった。

(なんや‥‥夢やったん‥‥)

なつきが、うちを。うちの手を。
断片的に夢を思い出し、静留は酷く緩慢な動作でベッドの上に身を起こす。
全身が強ばっている。ぐっしょりと濡れた背中がすぅっと冷えた。
まだ片隅に眠気はあるが、このまま眠り続ける気になれない。
もう、あんな夢を見たくない。

‥‥ちがう。うちがなつきを傷つけたんや。
判っとる。

なつきは今までと変わらず、友人として付き合ってくれる。
静留にしても、我を忘れてなつきを求める気は毛頭無い。
拒絶される事に耐えられるはずも無い。
あの時そうであったように。
そして何より、なつきは心をくれた。
静留が望む形とは異なっていたけれど、紛れようもない真直ぐな心を。

──せやのに‥‥息が‥‥よぉつけん‥‥

強く目蓋を閉じ、両手で意味もなく口元を被う。
寒くもないのに指先に息をつく。まだ指先は震えている。
欲しいのは両方なのだ。

「ほんま‥‥強欲やね‥‥」

隠れた口元から、苦い笑いと小さな呟きが洩れた。
前よりよっぽど欲深くなっている。
以前は心も身体も彷徨っていた。
なつきは命を掛けて自分に心の証を示してくれた。
なつきにとって特別な場所に、一番近しい所に自分はいる、と。
そう応えてもらったのに。
一度はそれに満足したはずなのに。
なのにそれでは足りないと、気がつけば心も身体も疼き続けている。
こんな思いがいつまで続くのか。
どこまで浅ましくなれば終わりが来るのか‥‥

ピピピピピ‥‥、という電子音に、堂々回りをしていた静留の思考が途切れる。
カーテン越しにも明るい部屋の中、音のした方に視線をやると、サイドボードの上の時計が8時を指していた。
気づけば、静留は夢にうなされて目覚め、ベッドの上に身体を起こしたままだっだ。
休日だったので、ゆっくり寝ようと思って遅めの時間に目覚ましをセットしていたのだ。結局、本来の役には立たなかったが。
目覚めたのは多分明け方だ。あんなに汗をかいたままで、冬なら風邪をひいていた。
己の物思いに自嘲的な小さな溜め息をひとつこぼし、極薄い紫の寝巻きの胸元を左手で合わせ、右手を伸ばしてアラームを止める。朝から酷く疲れていた。

あかん、今日、出掛けるんやった。

時計の日付けと思い浮かんだなつきの姿に、無意識に、静留はふと優しい瞳で笑ってしまう。
素直で艶やかな黒髪。真直ぐな視線と、強い自負を伺わせる小さな笑み。

こんなん、見せられへんな──

なつきが迎えに来る前に気持ちを切り換えようと、静留は重い身体のまま浴室へ向かった。
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by touno_y | 2005-08-14 15:00 | 舞-HiME ss
--- wish --- part.2 / 6

風華の大学へ進学した静留は、寮を出て一人暮らしを始めた。
大学まで電車で1駅。歩けない距離でもない。大きな繁華街へは逆方向へ1駅。
最寄りの駅前は商店街が開けているが小さな街だ。

改札を抜け、まだ店も開け切らないアーケードを、なつきは真直ぐに歩く。
最近、静留と出かける時はいつも歩きだった。
静留の部屋まで迎えに行って、お茶を一杯、一緒に飲んで。
それから街へ出る。気が向けば散歩がてら二人で歩いて。
ライディング・スーツを着るには暑い季節だから。


「オートバイ、変えたんやね」
静留は深い紺色のドゥカティを一目見て、いつもの穏やかな口調でそう言った。
なつきは道の向こうに視線を向け、ああ、とだけ答えた。
バイクを静留に見せるのは抵抗があった。何故なのかなつき自身も判らない。
だから静留の方を見ずに、いつものように「うちのためどすか?」とか「乗せてくれはる?」とか、そんなからかう口調で続く言葉を漠然と待っていた。
言葉は続かなかった。
沈黙を怪訝に思って振り向くと、静留はただ、どこか遠い目でバイクを見つめていた。


──聞かれたら、私はなんと答えたんだろう?
ふと思い付いた疑問に、なつきは立ち止まった。不意に落ち着かない気分になる。
人影を感じて視線を向けると、まだ開いていない店のショーウィンドウに自分の姿が映っている。
それは何だか困惑した表情で、じっと自分を見返していた。
自分の心まで映すように。





駅から5分程のマンションの周りは、一転して静かな佇まいである。
休日ということも相まって、いつも以上に車通りがなく、喧噪も遠い。
開け放った窓のレースのカーテンが、真夏の風に揺れている。その風が、静留の服の裾を揺らして吹き抜ける。薄青のワンピースは涼し気で、気温もまだそう高くなかった。

コン コン コン

ノックが3回。名を呼び掛けるような、なつきの音。
そんな些細なことにまで、心が揺れる。
(なんやうち、まだあかんかも‥‥)
窓辺近くに立っていた静留は、そう思いながらも玄関へと迎えに出る。

「おはようさん‥‥て、なつき、どないしたん?」

笑顔の仮面の出来を気にするより先に、静留はあっけに取られてしまった。
珍しい事に、なつきが膝に両手をついて肩で息をしている。

「‥‥アイス‥‥溶けるかと‥‥思って‥‥」
「走って来やはったん?」
「‥‥。」

左手を膝についたまま、俯いたなつきは息を整えながら、無言で右手のコンビニの袋を差し出す。仕舞え、ということらしい。
取り合えず上がるように告げて、静留は袋を受け取って台所へ向かい、途中で居間の箪笥に寄ってタオルを片手に戻ってくる。
髪に熱が篭って暑いのだろう。なつきは両手で髪を後ろへ流した。

不意に広がった乱れ髪。その香り。

一瞬、ぎくりと静留は止まる。暗い夢が過る。間が悪すぎる。
大丈夫。気づかれてはいない。
笑顔を繕い平静を装って、なつきにタオルを渡した。

「なんならお風呂、使うて?」

それだけ言うのに、内心なんだかとてもぎくしゃくした。
自分に嫌悪を覚える。
ひとりになりたい。唐突にそう思う。

「顔だけ洗わせてくれ」

普段鍛えているせいか、もうなつきの汗は止まったようだった。
息が上がっていたのは本当に僅かの間らしい。余程いきなり走ってきたのだろう。
受け取ったタオルを片手に、勝手知ったる様子でなつきは洗面台へ向かう。

なつきは何も気づいていない。別に気づかなくて普通なのだ。
ずっとこうやって隠してきたのだから。
汗に湿った髪を肌から掬ってこの手で梳きたい。
そのまま頬に手を添えて口付けたい。どんなにか熱いだろう。
だから安堵する。なつきがここにいないことに。
──今は、無理に笑顔でいなくていい。

埒の無い事を思いながら、ゆるゆると静留は窓際に向かう。
窓に直角に設えたソファーに所在なく座り込む。
部屋の奥、洗面台の方から、水音が聞こえてくる。
その音に背を向け、窓から吹き込んでくる風に向かう。溢れ出した思考は止まらない。

以前なら、冗談に紛らわせてなつきに触れる事もできたのだ。
伝わるはずはない。気づいて欲しい。叶う事など有り得ない。
ないまぜの想いのままでも、触れたくてどうしようもない気持ちを冗談でくるんでしまえた。
そしてふざけた振りをして、想いを紛らわせることもできたのだ。
でも今はもう、冗談に紛れて触れる事すらできない。
なつきは自分の想いを知っている。
嫌がられても傷つかないくらい、冗談の冗談でしか、なつきに触れることはない。
これならば嫌がられて当たり前。そう思ってでなければ心を守れない。
その冗談ですら、身を引くなつきに、どこかで傷つくくらいなのだ。
そうまでしてでも、なつきを近くに感じたいのか、と自嘲する。
そうだ、と自嘲し返すしかない。

「静留」

背後からのはっきりした声に静留は反射的に振り向く。
同時に、自分が失敗を犯したことに気づいた。声は問い掛けではなく呼び掛け。
水音などはとうになく、いつから立っていたのか、洗面を終えて部屋の奥から、なつきがじっと静留を見つめていた。
返事をし損なっていたのかも知れない。

「あ、もう終わったん?」
「ああ。ありがとう」

なつきの視線は外れない。
手にしていたタオルで顎の辺りを拭き直し、静かに静留を見つめ続けている。
何か尋ねられたのだろうか。

「なんどすか? うち、ちょう寝不足なんよ。暑かったさかい」

聞いていない質問には答えられない。こんな躱し方なら慣れていた。
堪忍な、と言いながら、普段の自分を思い出し、いつもならもうお茶を出しているだろうことに思い至ってソファーから立ち上がる。
自分がなつきから少し距離を取ってすれ違っていることに、静留は気づかなかった。

「待っとってな、今お茶の用意するさかい」
「疲れているなら、今日は止めるか?」

え? と振り返りざま、静留は思わず止まってしまった。
強い視線のままのなつきが、真直ぐに静留の瞳を見つめていた。
どくん、と鳴った心臓の音に、思わず身が引ける。なつきが静留の方へ身体を向けたせいか、思いの他の至近距離だった。
最近、こんなに真直ぐ見つめてくるなつきを静留は思い出せない。

「買い物なら今日でなくてもいいだろう。顔色が悪い」

そうしたい。それは嫌だ。
なつきは優しい。なつきは冷たい。
問うように微かに傾げられた顔。
そんな目で、そんな風に畳み掛けられたら断れない。そうやね、と。

「嫌や」

誰の声だか分らなかった。ごろん、と転がったそれは、渇いて掠れて重かった。
なつきは僅かに眉を上げた。一番驚いていたのは静留だった。

「今日、どうしても欲しいもんがあるんよ」

言葉を繋いで目を反らし、できるだけゆったり見えるように台所に逃げ込む。
声音の意味の重さは隠しようがなかった。
気まずいまま彷徨った視線に冷蔵庫が映る。
そういえば、なつきは汗をかいてまでアイスを買って来ていた。
正直、話題が変われば何でも良かった。

「せや、なつき、アイス食べたかったんやないん?」

神経質になった静留の背中が、ぱさり、と何かの音を捉えた。

「──買い物は止めだ」

唐突にそんな勝手な声がする。静留が抗議しようと振り向くと視界になつきの姿はない。なつきに貸したタオルがソファーの背もたれに投げられている。慌てて台所を出ると、なつきは玄関で靴を履いていた。

「なつき」

いかんといて。側に居って。
そんな言葉が言えるなら、初めから困りはしない。なつきはもう扉を開いている。

「一度戻る。着替えておけ。30分で迎えに来る」
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by touno_y | 2005-08-14 14:27 | 舞-HiME ss
--- wish --- part.3 / 6

逸る。
駅まで走れば3分とかからない。
改札を抜け階段を駆け上がる。
タイミング良く滑り込んで来た電車。
休日の昼間近、人の増えた車内の視線を浴びていたが、どうでもよかった。
強く深呼吸をして息を整える。吹き出す汗が続く。
もどかしい。
今すぐ。
多分、今なんだ。


「静留?」と、なつきは彼女の様子に問い掛けた。
ソファーに座ったまま、静留は答えなかった。
窓の外、風の来る遠くを見ている。
その目は知っている。あの時と同じ。
タンデムシートに変えたドゥカティを見つめていた、あの時と。
何故そんな目をする。私はまだ何も言っていないのに。
気づいてしまえば苦しかった。だから目を反らした。
私はいつも何も言わない。
静留はいつも、ひとりで結論を出す。
だから──。


駆け昇ったマンションの階段。馴染んだ色彩。ポケットから鍵を探り当てる。
差し込んだ鍵を回す。金属音ががちゃりと響いた。

──それで?

ひとりを告げる扉に、なつきは我に返る。すっと気持ちが引いた。

──それで私は?

立ち止まったせいか、身体に熱が篭る。急激に溢れ出す汗。
玄関に踏み込む。扉を閉める。室内のカーテン越しに暖められた淀んだ熱気。不快感。靴を脱ぐ。

──静留の望む答えは知っている。だが、私は解けていないんだろう?

ああ、そうだ。私には解けていない。
一番近い言葉は”怖い” ただ、それだけ。
時計を一瞥。静留の部屋から11分。電車を使ってでは最短記録。
まだ約束まで時間がある。

──私は、なにが、怖いんだ?

がん、と派手にバスルームの扉を開けて、気持ちの命ずるままなつきはシャワーを浴びた。


バイクに跨がったのは約束5分前。
一度派手に落としてしまったフルフェイスを引っぱり出してきた。被った感じが懐かしい。
‥‥ド、ドドンド、ドドン‥‥
地を這う排気音。握りしめたクラッチは既に身についた重さ。ギアを入れる。軽くアクセルをふかしクラッチを緩める。ぐん、と思い描いた綺麗な加速。反動。ハンドルに引き付けた腕と背中。
駆け出した道路。緩やかに曲がるカーブに心持ち体重を被せ気味に乗せる。アクセルを開く。シートに積んだもう一つのヘルメットが陽射しを反射した。





多分、バイクを持ってくるのだろう。
戻る。着替えろ。30分。
このキーワードから漠然と静留は思っていた。
なつきのことで、これ以外に当てはまる事柄が浮かばない。
だが。
本当にそうなんだろうか。
なつきは、静留に二人乗りのシートになったドゥカティを見せてから一度もバイクに乗ってこない。
静留にしても、見たくはなかった。

このシートに座るんは誰やろか。

そう思って、狭そうなシートを見つめた。
たった一つの、なつきが自ら求めて許した、なつきの後ろ。
冗談でも聞けなかった。
嘘でも言葉の綾でも、否定されたら、きっと辛い。
そして、肯定されるとも思えない。
なつきは何も言わない。
その深い紺色のバイクをなつきはとても大事にしている。命を預け、心を許した、大事な場所。
新しく設えられたそれは、つまり。
なつきが求めた、彼女の命の隣。
だから、聞けない。


静かな住宅街に鳴り渡る、低い爆音。
そして、緩やかに続いて行く太鼓のような響き。
ぅぅん、と命の眠る音。
それでも、静留は動けない。

コン コン コン

し ず る?

ノックの音がする。そう思うのに。

間を置いて、もう一度。 し ず る? とノックの音がする。そして声がした。

「開けるぞ?」

おかしぃなぁ。うち、今日ほんま、あかん‥‥

今日のなつきはなんだか全然分らない。
自分もほんとに分らない。
意味もなく泣き出してしまいそうだった。

──有り得へん。
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by touno_y | 2005-08-14 14:26 | 舞-HiME ss
--- wish --- part.4 / 6

「上も長袖を着ろ。薄くて良いから」
なつきは玄関に立ったままでそう言った。
先程逢った時とは違う服装。しかしいつものライディング・スーツでもなかった。
ほっそりとしたラインのGパンに濃い藍色のタンクトップ、襟元のカットが美しい、長袖の白くて薄いジャケット。
華奢な身体に、機能美と言えるような飾り気のないシンプルなラインが良く似合う。
なつきの言葉に、珍しくコットンパンツ姿の静留が麻の上着を羽織る。
促されるまま玄関を出、鍵を掛ける。なつきの背中を追うかたちでマンションの外に出た。

ドゥカティはマンションの前に停められていた。
バイクと同じ、深い紺色のフルフェイス・ヘルメットを手に、なつきが静留に近付く。
「どこ行きはるん?」
「髪は背中に流してから被った方がいいぞ。邪魔になるからな」
静留の問い掛けを無視して、なつきはヘルメットを軽く持ち上げる。
それから安心させるかのように、被れ、と少し笑う。
その笑顔は静留を安堵させるより、内心硬直させるものだったが、このままではなつき自ら、静留の髪を背中に流してヘルメットを被せかねない。
そう思い至って、静留は慌てて背中に髪を流し、ヘルメットを受け取った。少し頬が熱い。

(ほんまに分らん。なつき、どないしたんやろか)

なつきはバイクに近寄って、ミラーに掛けてあったやはり濃紺のフルフェイスを自分も被り、シールドを上げながら静留の元へ戻って来た。
ちょっと顔をあげろ、といって、静留のヘルメットの顎ひもを丁寧に調節する。
苦しくないか?と確認し、静留が頷くと、そのままバイクに戻ってシートに跨がる。

「乗ってくれ。マフラーは熱いから気をつけろ」
「乗って、ええの?」
「その格好で他に何をするんだ?」

そういう意味ではなかったが、なつきに判るはずもなかった。
静留は躊躇いながらもバイクに手を掛け、なつきに指示されたステップに足を掛けてなんとかシートに収まる。思ったより座面が高い。それにこの座り方はなんだか落ち着かない。
戸惑っているとなつきに手を掴まれた。左手、右手となつきの腰に自分の腕が回される。バランスを崩しかけて思わずしがみつく。

「しっかり掴まっていろ」

こくん、と静留は頷く。これでは判らないかと思い直し、ぎゅっと一度腕に力を込めた。
くすりとなつきの笑う声が聞こえた。なんで笑うん?

「──私は、多分、言い訳が欲しいんだ」

そんな風になつきが呟いた気がした。
直後、地を這うような音を立ててドゥカティのエンジンが再び命を与えられた。





爆音と振動。慣れない挙動。
しっかり掴まれ。危ないから。
だから、しっかりと抱き締める。
今はそうしていていいのだから。

なつき、気ぃついとったんやね‥‥
うちが、おかしいこと

情けなくて嬉しくて哀しくて、じんわりと咽の奥が痛む。
寂しくて苦しくて仕方なかった。
なつきに触れたくて、温もりを感じたくて、自分でもどうにもならなかった。
なつきを追い返してひとりで抱えるのだ思っていた。いつものように。

思いのほか硬いドゥカティの後部座席。
このシートが誰の為のものなのか。
どうしてこのシートが必要だったのか。
その意味を思うと切ない。
なつきは優しい。なつきは冷たい。

”私は、多分、言い訳が欲しいんだ”

言い訳。それがこのシートなのだろう。
なつきに触れる言い訳ができる、寂しさを受け入れてくれるための席。
それは同時に、どうあっても同じ気持ちではないと拒絶を意味する席。

振動に怯えた振りで、ぎゅっとなつきを抱き締める。
視界に映っていたなつきの背中と流れる景色がゆっくり滲む。

ほんま、いけずやわ‥‥。

なつきの身体は暖かい。鼓動が伝わってしまいそうに近い。
やがてこぼれた涙は、ヘルメットのクッションに吸い込まれた。

‥‥おおきに。





腰に回された静留の両腕と、背中の温もりが心地良い。
重心の変わったバイクの扱いも徐々に慣れてきた。
元より、今日は飛ばすために走るんじゃない。

ただ何となく、バイクのシートをタンデムに変える奴などいはしない。
そんなこと本当は判っていた。

タンデムシートに乗せる相手。浮かぶのはいつも静留だった。
他の人間を乗せることなど思いつきもしなかった。
静留が後ろに乗っている姿しか想像がつかない。

気づいているのか?
私は少しだけ、判るようになった。なってしまった。

無意識に距離を置こうとする。
いつものように私をからかって笑わない。
穏やかな笑顔のまま視線を外す。無口になる。
そんな時は、声もたてず、涙も流さず、きっと静留は泣いている。

どうすればいいのか判らない。
私は自分に嘘はつけない。

だからこんな形でしか答えられない。
こんな形でなら、答えられる。

だから、できるだけ遠くまで走り続けよう。
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by touno_y | 2005-08-14 14:25 | 舞-HiME ss
--- wish --- part.5 / 6

結局、バイクを停めたのは陽も大分傾いた湾岸道路沿いだった。
道路脇に少し開けたスペースが有り、自動販売機が2台並んでいる。
なつきはエンジンを止め、静留に降りるように促す。グラブを外して脱いだヘルメットに突っ込み、ミラーに掛ける。
視界一杯の海は、そろそろ色を変え始めていた。ぐるりと海を囲んだ防波堤と国道が、右手に遠くまで見渡せる。薄く霞んで見えるのは港だろうか。左手には岬が道路を飲み込んで広がっている。
暑さも盛りを過ぎ、もう走っていなくても潮風が少し涼しく感じられる。

静留はヘルメットを脱ぎ、右手で柔らかそうな薄茶の髪を軽く踊らせる。
それからなつきを見て、にっこり笑った。

「おおきにはばかりさんどした」
「静留こそ大丈夫か? まだ帰りもあるんだぞ」
「そやね」

そういって静留は海の方を見遣る。慣れないバイクに数時間も座っていたのだ。疲れない方がおかしい。
なつきがそう思っていると、くるりと静留は振り返り、遠くの建物に視線を送る。

「疲れたはるなら泊まってきます?」
「ん?」

静留の視線の先にあるのはホテルだ。ただし、前に二文字付く。

「‥‥え?」
「冗談どす」

そう言って、動揺してしまったなつきの表情を見て心底楽しそうに笑っている。

「‥‥置いて帰るぞ、まったく‥‥」

なつきは脱力した体で、ぽつんと2つ並んだ自動販売機に向かう。
今日初めて聞いた静留の冗談に、内心少しほっとしていた。
しばらくしてぱたぱたと戻ってくると、お茶を静留に差し出す。

「おおきに」

静留が本当に嬉しそうに缶入りのお茶を受け取るので、なつきはなんだか無性に照れ臭かった。
静留は防波堤に寄り掛かりながら、海を眺めてお茶を飲んでいる。
なつきは少し離れたバイクに戻り、シートに凭れて缶コーヒーのプルトップを引いた。
一口飲み干して、空を見上げて背筋を伸ばす。雲の縁が薄い茜色に変わりかけていた。
そのままタンデムシートに左手を付く。
そこには以前のシートカウルとは異質の、呆気無い程の空間。

──うちのためどすか?  そうだ。

──乗せてくれはる?   ああ。本当に乗りたくなったらな。

じゃあどうして私は静留に最初にそう言わなかった?
聞かれるのを待ったりせずに、静留を乗せる席だと言えばよかったはずだ。
静留にバイクを見せたくなかったのは何故だ?
言い訳が欲しい。そう思った。自分が納得できる理由が。
だが‥‥。私は何に対して言い訳をしている?

左手の空白が寂しい。
この、お世辞にも座り心地はよくないシートは、誰かが座るためのものだから。

「静留」

思わず、そう呼び掛けていた。





呼び掛けに振り向いた静留は、ゆっくりとなつきの元へ歩いてきた。
なつきはバイクに跨がっていた。

「なつき、缶、捨てていかんと」
「いや、ちょっと座ってくれ」
「座るて‥‥ここにどすか?」

静留は視線でバイクのシートを指す。こくりとなつきは頷く。
ちょっと思案顔だった静留は、間を置いてから片手にお茶の缶を持ったままタンデムシートに横座りになった。やはりこういう座り方の方が落ち着くらしかった。

「これでええ?」

静留は背中越しになつきに声を掛ける。なつきは答えずに空を見上げ、大きく一つ深呼吸をした。

「なつき?」
「‥‥アイスも、言い訳だったんだ。走ってゆけるだろう?」

なつきの口調は穏やかで。暮れ始めた夕日に素直な黒髪が映える。
潮風が二人の髪を流してゆく。静留からはなつきの表情は見えない。

「その席は、静留のための席じゃない」

静留は少し瞳を伏せ、きゅ、と両手で缶を包む。
ふ、となつきが笑う気配がした。

「私のための席だったんだ。自分でも気づかなかった」
「なつき?」
「私が、静留に座ってもらいたかったんだ。やっと分かった」

静留は困惑した表情でなつきの後ろ姿を見る。さぁ、とまた海風が過る。
なつきの素直な髪が流れて光る。

「こんな風に近くにいるために、理由が欲しかったんだ、私は」
「あ‥‥」

──言い訳が欲しい
静留がなつきに触れるための理由。静留はそう思っていた。
なつきが静留の近くにいるための理由。なつきはそう言った。

「この気持ちがなんなのか、私には解らない。静留と同じではないかもしれない。
 少し違うような気もする」
「なつき」
「認めるのが恐かった。静留のことは大事だったけど、こんな風に自分以外の人間がどうしようもなく必要だってこと、考えなかった」
「なつき。こっち向いとくれやす」
「いーやーだ」

なつきはくすくす笑っている。耳が真っ赤だ。
静留は必死になってなつきを振り向かせようとしたが、なつきは笑い続けている。
やがて笑ったままゆっくりと静留に少しだけ背中を預けた。
静留は上半身を右に少し捻り、なつきの背中を右肩で受け止めた。
そのまま静留はちょっと顔を傾けて、なつきの左肩越しに前を見る。、風に煽られたなつきの髪が頬に触れて落ちる。
胸が詰まる。それなのに、まあるい、やわらかな感情がどんどん広がってゆく。それはどちらの気持ちだったのか。

「すまない。やっぱりこうしたいだけだったんだ」

なつきは静留に身体を預けて空を見上げている。
空と海が夕日で真っ赤に焼けている。なつきは星を見ているようだった。

「なんや‥‥なつき、ほんま可愛らしなぁ」

なつきは無言だ。

「‥‥怒らへんの?」
「ここまで甘えていたら、怒るだけ無駄だろう?」

ぷ、と静留は吹き出す。

「‥‥なぁ、なつき」
「うん?」
「キスしてええ?」
「いーやーだっ」

それでも二人とも笑っている。なんだか暖かくて仕方がない。
そうやってじゃれあいながら、二人は陽が沈むまで笑っていた。
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by touno_y | 2005-08-14 14:24 | 舞-HiME ss
--- wish --- part.6 / 6

水平線が空に紛れ、海の向こうまで星空になった頃、なつきは身体を起こした。

「ちょっと遅くなったな。寒いかもしれないから、ゆっくり走って帰るぞ」

静留はなつきの分の空き缶も受け取ってバイクから離れ、薄白く明かりの点る自動販売機脇のゴミ箱に捨てる。
戻りしな、街に向かう道路の行方を眺めながら静留は呟く。ナトリウムランプのオレンジ色が規則正しく灯っている。

「この分やったら、うちは大丈夫や思いますけど」
「夏でも夜は結構冷える」

それならば、と思い出して、どうしていつものライディング・スーツを着てこなかったのかと静留はなつきに尋ねた。

「昼間は暑いし。それに私があれを着ていたら、走っていて、普通の格好の静留が寒くても解らないだろう?」

なつきはあっさりそう答えた。静留は虚を突かれた気分になる。

「うちに聞いたらええやないの」
「静留はそういうことは我慢するから、だめだ」

きっぱりと言い切られた。確かに返す言葉がない。

「なつきの中にはうちがちゃあんと居るんやね」
「は? 何を言っている?」

なつきは優しい。
きちんと相手の事を見て、自分を相手の立場に置いて、思い遣ってあげられる。

(うちの中に、なつきはちゃあんと居るんやろうか?)

なつきしか見ていないはずだったのに、結局自分しか見ていなかった。
なつきを損ねるものが許せなかった。
なつきにとって邪魔なもの、嫌なものは全部消し去ってしまいたかった。
けれど、それは静留自身が望んだことだ。それは解っている。
だが、なつきが自分に望んだことが解らない。
巻き込みたくない、とは聞いた。
だがその望みは手後れだった。最初から巻き込まれていた。
そして全ての業を受け止めて、なつきは自分を救ってくれた。
それなのに。
なつきが今、自分になにを望んでいるのかすら解らない。

「静留」

オレンジの街灯を映すヘルメット。それを静留に差し出しながらなつきは問いかけた。

「はい?」

なつきの視線をまともに受けて、ちょっと驚きながら静留はそれを受け取る。

「ちゃんと言ってくれ。静留はいつもひとりで結論を出そうとする」
「ひとり、て」

突然の申し出に静留は戸惑った。

「静留のことは静留が決めれば良い。だが、私も関係することなら二人で考えてもいいだろう?」
「うち、なつきのことやなんて言うたやろか」

口に出していたのかと静留は焦っただけだったが、その言葉を聞いた途端、なつきは絶句する。

「あ‥‥。いや、ずっと私を見ながら考え込んでいるから、つい。‥‥すまない」

その素直な言葉に、ふと静留の口から言葉が洩れた。
解らないなら、聞いてみよう。なつきはきっと答えてくれる。
受け取ったヘルメットを、傍らのバイクのシートに置く。

「──なつき、うちにして欲しいことあります?」

なんでもええよ?と言葉を繋ぎ、視線を落として静留は微笑む。
そう言えば、以前も似たような質問をして、あの時はなつきに拒まれた。そう思い出して笑顔のまま寂しそうな表情になった静留は、はにかんだようにも見えて、いつもより幼いような印象だった。
なつきは穏やかに言葉を紡ぐ。

「そうやって、思っていることを口に出して欲しい。静留は言わないから難しい」
「そんなんでええの?」

静留はきょとんとした目でなつきを見つめる。

「静留には結構難しい注文だと思うけど。それに、別に私に関することじゃなくていいんだろう? 静留にして欲しいことなんだから」

そうやね、と静留は困惑した様に呟いた。

「あと、さっきも言ったけれど。ひとりで全部背負い込むな。二人のことなら二人で決めれば良い」
「うちのことばっかりやないの」

なつきは呆れた様に笑って、腰に手を当てる。

「静留が人のことばっかりなんだ」

その姿勢のまま、なつきの表情が優しい笑顔に変わる。

「今日は、だから嬉しかった。買い物止めようって言ったら、静留、珍しく嫌だって言っただろう? ‥‥ああそうか、結局、私のせいで買い物はできなかったんだ。すまなかった」

「気にせんといて」

静留は足下に視線を落とす。冗談でなければ言えるはずがないと思っていた。でも思ったことを言葉にしろとなつきは言った。だから静留は素直にそれを口にする。

「側に居って欲しかっただけやさかい」

声に出してみれば思いの他あっけなく。それは潮風に溶けて。
でも心に溜めておくよりもずっと安心できてすっきりした。
視線を上げる。案の定、なつきは夜目にも真っ赤になって固まっている。
街灯のオレンジ色のせいばかりでは絶対にない。

「そない赤うなって。ほんまになつき、可愛いらしなぁ」
「しずるーっ」

堪忍な、と笑って静留は流す。そろそろ帰らないと本当に遅くなる。
薄茶の髪を背中に流してヘルメットを被った。
同じように、不貞ながらもヘルメットを被ってグラブをはめ、呼吸を整えたなつきがバイクに跨がり、静留がつづく。
静留が掴まろうかと少し躊躇いがちに腕を伸ばした時、なつきが不意に振り向いた。

「努力はする。だから、そういう時はちゃんと言ってくれ」

ぶっきらぼうなくぐもった言葉はフルフェイスの中から聞こえた。表情は見えない。
静留は初めなんのことか解らず、それが先ほどの返事だったことに気づいて、涙ぐむくらい胸が一杯になった。
行きと同じように、自分の身体になつきは静留の腕を導いて回させる。
爆音の中、発車する直前に、静留の手の甲を「ここだよ」というように、ぽんぽん、となつきの右手が叩いた。



(了)

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by touno_y | 2005-08-14 14:23 | 舞-HiME ss